縫い子さんの日がな一日(改)

「若き職人」の称号を返上しつつ、中々、「熟練の職人」になれない田舎の仕立て屋さんの日がな一日

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ソロへ

君に初めてあったのは、夏。



生き物を飼う事には、たいそう、反対だったおかーちゃんが、うきうきした声で、
「犬を飼った」
と報告してくれた時、
すぐにでも飛んで帰って君に会いたいと思ったよ。
それには、家はちょっと遠すぎたね。

小さくて、背伸びしてもテーブルには届かなかった君は、
おかーちゃんのひざの上によじ登って、テーブルの上のものを物色していたんだってね。
両手の平に乗るくらいの大きさだったのに、
お盆の初日、初めてあった君は、すでに、大人だった。
大きさだけは。

まだ、足を上げておしっこも出来なくて、
本当にオスなのかと、犬を転がしながら足をムキっとあげて確認したっけ。

確かに。オスだったね。

それから、半年毎に会う君は、その都度、大人になっていったね。
会うたびに、千切れんばかりにブンブンふってくれる尻尾がすごくうれしかったんだよ。
早く一緒に住みたかったけれど、まだまだ、お姉ちゃんたちは半人前だったからね。
もう少し、がんばらないとだめだったんだよ。

たった一人で、冒険に出かけた日、
おかーちゃんは、君のことが心配で、玄関で毛布に包まって待っていたんだよ。

脱走癖は、そのころについたんだね。
ある時は、おとーちゃんが自転車で探しに出かけて、荷台に乗せて帰ってきたり、
ある時は、玄関を開けたら、そこに寝ていたんだって?
時々、振り返りながら、追いかけてくるのを確認していたのは、
君にとっては、ただの追いかけっこだったから。
人間様が、君の足に追いつくのは至難の業だったよ。ほんと。

君と同居を始めたのは、君が5歳の時だった。

もう、すっかりちゃっかり立派な青年になって、
彼女のほしい年頃になってたね。
だからといって、おかーちゃんの背中によじ登って、予行練習はだめだと思うんだよ。
お姉ちゃんたちのひざの裏にしがみついてやったり、
姪っ子ちゃんたちを背後から羽交い絞めにするのも、どうかと思うよ?

春。
八重桜がはらはらと降り注ぐ花びらの間を、散歩したね。
人間様がワラビを物色している間、君は、違うものを物色してたね。

姪っ子ちゃんたちと、サクラの枝をゆすって、サクラの猛吹雪を作ったのは、楽しかった。
君には少し迷惑だったかもだけど。
冷めた顔で、困った風に、花びらを見送ってたのを、知ってるよ。

夏。
君は雷と花火が大嫌いだったね。
うれションは、したことがないけど、こわションはいつもだった。

遠雷さえ聞こえない、遠い雷にも、敏感に反応して、
ワンワンキャンキャン鳴いてた。
人間様には、スポーツランド菅生のエンジン音と花火、
曇った日の飛行機の逆噴射の音と雷の音が区別がつかなかったけど、
君には分かっていたんだね。

でもね。
いくら怖いからって、二つ並んだ小さな下駄箱の中身を全部出して、そこに納まることはないと思うんだ。
だって、お尻、隠れてなかったよ?
それに、狭すぎて、出てこれなくなってたじゃない?

雷がなった日。荒らされた玄関に君の姿が見えなかったときは、本当に心配したんだよ。
よくみたら、下駄箱から、にょろりとたれてる尻尾があった。
君には悪いけど、みんなで笑ったよ。証拠写真があったはずなんだけどな・・・。
今度、探しておく。

秋。
日に日に寒くなって、日が短くなって、でも君はやっぱり元気に散歩に出かけた。

去年の秋に、足元が覚束なくなっても無理に散歩に連れ出したのは、
君にとっては良かったことなのかな?

トンボが飛んでて、君はぜんぜん気にしてなかった。
時々、リードを引っ張って急かすお姉ちゃんを、ちょっと恨めしそうにみてたのは、もう歩きたくなかったから?
そんな時、君は、里山に落ちていく夕日を、ただ見てたね。
知ってた?
君の毛皮に、赤とんぼが止まってたんだよ。
隣で見てた、お姉ちゃんのジャージにもね。
君にたかる蚊を警戒してたら、ジャージの上から、お姉ちゃんが蚊に食い殺されて、
痒くて大変だったんだから。

冬。
始めてみた雪に君はびっくりしたんだって?
お姉ちゃんたちと一緒に住むようになったのは、もう、5回目の冬だった。
だけど、あんなにたくさんの雪を見たのは、もしかして、初めてだったかな?
イノシシでもないのに、雪に向かって猪突猛進していったね。

バージンスノウにおしっこかけて、カキ氷みたいだった。

今年。
季節外れの大雪に、
やっぱり散歩に連れ出したのは、少し後悔しているよ。
もう、よろよろになってたのに、あんなに雪の深いところを歩かせて、本当にごめんね。
お腹につくぐらい、深い雪に、立てなくて、へたっちゃってたね。


10歳を過ぎても、げんきはつらつで、オスと見るなりかみつくし、
メスとみると、鼻を鳴らしてラブコールを送ってた。

近所の白い女の子に、ある日、赤ちゃんがいることを知ったとき、
種は君かと思ったよ。
その時も思ったけれど、
君の子だったら、どんなに良かっただろう。

近所の集会所で、狂犬病の集団注射があったのは、本当に大変だった。

君は注射が嫌いで、嫌いで、嫌いで。
何もないのに、その集会所に差し掛かると、意地でも動かないと、後ずさって抵抗してたっけね。
それから、病院も嫌いだったね。
フィラリアの検査に行くのに、どれだけ大変だったか。

君も大変な思いをしただろうけど、
人間様は同じくらい、大変だったんだよ。

車の、3センチばっかりの窓の隙間から、
君は鼻面を突き出して、ごふー、ごふーと、鼻息も荒く脱走を試みてたね。
いくらなんでも、そんな狭いところは無理だって。




去年の今頃。
君が急に食欲をなくして、下痢三昧だったとき、ただの食中りだと思ってた。
だって、しばらくしたら、食欲も戻って、健康ウンにょに戻ったから。

それに、おかーちゃんが、君に、君のご飯以外のものを、どんどんやるから、
君は、君のご飯を食わなくなっちゃったじゃない。

お姉ちゃんは、とても心配だったんだよ。
無駄に体重が増えたりするんじゃないかとか、
栄養が偏るんじゃないかとか。
好きのものばっかり食べたら、だめなんだよ。

だから、おかあちゃんが、田舎に帰った隙に、
君には悪いと思ったけど、君の食生活を強引に規則正しく戻させてもらったよ。

君は、恨めしかっただろうね。
大好きな白米も、ジャーキーも、お魚や、鶏の胸肉も、もらえなくなっちゃったんだから。

でも、そのおかげで、ずいぶん、体調も戻ったの、気づいた?
半絶食状態だったから、激痩せしちゃったけどね。

でも、おかーちゃんが田舎から帰ってきた時、その痩せ具合に、びっくりしてた。
気づかなくてごめん。
本当に、ごめんね。
気づいてあげられなくって、本当にごめん。
君は言葉が話せないのに、気づかなくて、ごめんね。

おかーちゃんの顔を見るなり、君は、今までのおねーちゃんの悪行を告げ口したでしょ。
おかーちゃんがまた、君のご飯以外をやるもんだから、
また、体調が悪くなった、と思ったんだよ。

病院に連れて行ったら、肝臓が、ひどく悪くなってた。



生きているのだから、いつかはその日が来るのは分かっていたけど。
「うちの子に限って」
尻尾が割れるまで、生きていると思ってた。
尻尾が割れても、生きていてほしかった。

時間は止まらないのは分かってたけど。
君のほうが、先にいくのは分かってたけど。


ずっと、一緒。
そんなことは思ってないよ。

君は、君の行くところへ行かなきゃ行けない。
そこには、きっと、先に、君のおとんやおかん、おにーちゃんや、おねーちゃんも、きっといると思うから。
きっと待っててくれていると思うから。

だから。

もう、お薬を飲まなくていいし、
無理にご飯も食うこともない。

呼吸が苦しくて、
心臓がどきどきして、
手足がぴくぴくして、どうしようもないなんてことも、もうないんだよ。

きっと、いつかのように、全速力で風に乗って走れるし、
怒られないで、好きなところにいって、好きなことが出来る。

そうだ。
君は、一人で大冒険が大好きだった。
今度は、どこに冒険にいこうね?

うちのことは気にしなくていいんだよ。
君は、優しかったから、きっと、誰か喧嘩してないかと気にしてくれると思うけど、
そうだね。
時々、喧嘩もすると思うけど、君が心配するようなことは、絶対にないから。

だから。

安心して。

安心して、いっていいよ。
家のことも忘れて、やりたいことを、したいことを。自由に。
リードも首輪も、全部置いていったから。

でもね。
でも、一個だけお願いがあるの。

いつか。
きっと、いつか、君のところへ逝く時が来ると思う。
それはいつになるか分からないけど、絶対に、そっちに逝くから。

そしたらね。

君に着せてあげたサンタクロースの衣装を目印にするから。
だから。
遠くからでいいから。
だから、迎えに来て?

今は、まだ、涙が止まらないけど、もう少ししたら、きっと笑えるようになるから。
今だけ、もう少しだけ。
君が嫌いだった涙も、我慢してね。

ありがとう。
ありがとう。
うちに来てくれてありがとう。
一緒にいてくれてありがとう。
今まで、ありがとう。



ありがとう。


ソロ。
お犬様

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1 Comments

Comment

(´;ω;`)ウッ・・
2010/07/06(Tue) 19:34:05 | URL | タロス [ Edit]
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