縫い子さんの日がな一日(改)

「若き職人」の称号を返上しつつ、中々、「熟練の職人」になれない田舎の仕立て屋さんの日がな一日

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おくみが逃げるっ!

 まだ、お弟子さんの頃。

 着たときに、褄下が下がるんです。
 直してください。


 と、いう直しの依頼がありました。

 はぁ。
 
 呉服屋さんいわく、

 着たときに、この着物だけが、おくみの裾が体から離れていくんです。
 他の着物を着ても、そうはならないけれど、この着物だけ、褄下が膝に沿わないんです。
 
 はぁ。なるほど。

 他の縫製所や専門学校で直してもらったが、どうやっても直らず。
 専門学校の先生たちが、一所懸命考えてくれて、あーでもない、こうでもないとやってくれて、
 直りましたよ。と、一度は納品したんですが、お客さんから、再度、同じ依頼。
 やっぱり、体から離れていくというか、沿わないというか。

 着方が悪いんですかねぇ。

 と、お客さんに言われたが、そこで、「そうですね」とはいえなくて、とりあえず持ち帰ってきた。
 直りますか?

「そりゃ、着方が悪いんじゃないですか?」
 と、先生と奥さんもいえなくて、はぁ、そうですか。と、受け取った。

 参考までに。と、今までされた直しを聞いてみたら、
「結局、衿の始末が悪いということになって、そこを直したら、体に沿うようになった」

   衿の始末は、身頃側の衿に入るおくみの縫込みとおくみそのものの始末。
   無理のないように畳んで、綴じる所もあり、綴じないでそのまま、衿とじをするところもあり。

 ということで、納品されてきたそうだ。なのに、お客さんに納品したら、元の木阿弥。
 これは、誰が聞いても、お客さんの着方・・・・・・げふんげふん。

 さて。
 あらゆる方法が試され、着付けの仕方も悪くないのに、その結果であるということは、生地が体に沿わないものであるということも考えられるわけです。
 例えば、安い化繊であったら、妙な張りがあって、生地自体が独立独歩しちゃって、馴染まない。というのもあります。
 こればっかりは、仕立て屋でも着付け教室でも直りません。
 
 それも考慮に入れつつ、呉服屋さんは持ってきたわけですが、もって来たということは、呉服屋さんのなかでは、直る前提が、きっと、あったんでしょうねぇ・・・・・・。

 結局、どうやって直したかは分かりません。
 とにかく、衿の始末が悪いんだろ? そこ直しとけ。
 という、先生の言葉を聴いたような聞かないような。
 そんなもん、着方だ! と、最後まで豪語されていた先生は、後日、件の呉服屋さんに、

「先生! ありがとうございました! ちゃんと着られたそうです!」
 
 の言葉に、「着付けが上手くなったか」と、ぼやいていたのをわたしは忘れません。

 さてさて。
 人事のように思っていた、褄下が体から離れる現象w
 ○年前、役所でやっていたワンコイン着付け教室で、体験できました^^

 ピンク色の雲取り、正絹の小紋でしたが、前、数回はちゃんと着付けられたのに、その日に限って、何度やってみても、おくみが体から離れていくのです。
 まっすぐ立っている分には問題なく、普通に着付けられているのですが、膝を折って屈んだとき。
 いつもなら、すっとひざ下に回りこんで足に沿うようになるのに、そのまま、すとんと床に直撃。
 腰紐の位置が悪いのか。
 上前の回り込みが浅いのか。
 下前の褄をちょっと上げてみたり、少し背を回してみたり、オハシヨリの始末であっちを引っ張りこっちを引っ張りしてみたけれど、何故か、直らず。
 仕方がない! と、着なおしてもダメでした。


 これのことか!!

 結局、何が原因だったのか分かりません。
 
 ・・・・・・、お天気かなぁ・・・・・・?
 
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弟子の頃

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マニアック

一年生のお買い物で、一番、緊張したのが、紙やすり購入。
いつものスーパーの裏手にある、小さなプラモデル屋さんが、その購入先。

紙やすりを何に使うかというと、お鏝(こて)のお手入れ。
週に2回、紙やすりで軽くこすってきゅきゅっと磨きたおすのです。

あまり荒い目を使うと傷がつき、
そこから錆びてくるので、998番~1000番あたり。

で。

この辺の番手を使うのは、どうやら、かなりマニアックらしく、少々のお店では置いていないのです。
だから。プラモデル屋さん。

そのプラモデル屋さんの店先には、何分の一かのリアルガンダムが置いてあり、噂によると、そこのおじさんの手作りらしい。
手作りというのは、パーツの一つから作るほどの通なのだそうです。
その噂のガンダムは、身長(?)が120センチほどもあったかと思います。



そのおじさんは、無口で無愛想で、ちょっと怖いと噂(うちの縫製所限定)で、店先のガンプラに惹かれながらも、恐る恐るお店に入る。

・・・・・・。だれもいない。チャンスっ!

外からチェックしておいた紙やすりコーナーで物色。
よく考えたら、誰もいないと、それはそれで困るんですけど、噂に左右される、ひわさん@B型には見えない。
1000番はちょっと細かすぎるとのお姉さんたちの意見に、990番辺りを探すのだけど、見当たらない。

「紙やすりをお探しですか~?」

ひいいいぃぃっ!
怖いと噂のおっちゃん登場。しかも、いつの間にか・・・・・・。
見ると、普通のおじさんです。

「随分細かいの探してますね。何に使うんですか?」

しかも、にこやかです。
事情を説明すると、瞬時に納得。このおじさんは「鏝」を知っていた模様。
やっぱり、1000番が一番いいらしい。
大事なものに傷を付けず、汚れだけを落とすことができるのだそうです。

ほほー。と、しばし感心。

「あんまり、汚れがひどいときは、950番辺りで磨いてから1000番で仕上げするといいですよ」

800番台になると今度は荒すぎて磨くというより、傷つけてしまうそうです。
流石、ただのマニアではないのですね。

お会計をして、「ありがとー」とお店を出ると、

「またきてくださいね^^」

そう。最後の顔文字付で。

   もちろん、また行きますともさ。

心の中で、大きく頷いたことは間違いが無い。


あとで、お姉さんたちに聞くと、
プラモデル屋はほとんど女の子が行かないお店であり、愛想はいいらしいのだ。
ただ、対極の感想もあり、その時々で、機嫌がよかったり悪かったりしただけなのかなー。と。



数年後。
ワタクシが卒業を迎える前に、そのプラモデル屋は、無くなってしまいました。

あの、何分の一かのリアルガンダムの行方と、その後のおじさんが、少し気になるところです。
弟子の頃

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ひげ紬。

ひげ紬。
その名の通り、ひげひげがもけもけと表に出ている紬。


お弟子さんの頃に、古が一回、新で一回見たことがあるきりです。
ちょっと覚えていないのだけれど、
確か、織るときに、糸を挟んで織るはず。だから、引っ張ると抜けてくるんじゃなかったっけ?
その、もけもけした糸を見ると、無性に引っ張りたくなるんですよ。

ひげ紬の特性が、それなんだから、糸、引っ張ってぬいちゃったらただの紬。
ただの紬になっちゃったら、「ひげ」の異名が無意味になってしまう。

裁ちのときに、お師匠さんが、
「珍しいものだから見ておくように」とおっしゃって、裁ちあわせを見学しました。

「これは、ひげ紬といって、このひげひげが多いほうが表だ。
普通、こっちの少ないほうを持ってくるけど「ひげ紬」と名前がついたらこっちが裏。
間違っても、もけもけしてるからって裏に持ってこないように」

と、ひげひげ、もけもけとかなり抽象的なお話を頂きました。



よもや、こんなところで再会しようとはネぇ。
しかも、悉皆。
弟子の頃

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鹿の子(かのこ)と疋田(ひった)

『鹿の子』といえば、絞りの代表的な染め模様です。
鹿の子供に出る模様に似ているので、そういうのだそうです。

いのししの子供が『瓜坊(うりぼう)』と呼ばれるのに、ちょっぴり似ています。

『鹿の子』は一々あの模様のとおりに絞って染めるので、非常に手間と暇がかかります。
絞るのにも手間がかかりますが、解くのも手間がかかります。
だから、高価なのです。
鹿の子の総絞りは、部分的に絞った糸がほつれてないこともあるのです。
それを見つけたときには、コアラのマーチの眉毛を見つけたときに似た喜びがあるのです。
鹿の子の総絞りは、ほとんどの場合、裏打ちが付いています。
裏打ちは、薄い正絹を裏に張り、45度バイアスで斜めに、ぞべより細い糸で止めていきます。
そうしないと、伸びたり縮んだり、落ち着かないのです。

『疋田(ひった)』とは、染め模様のことです。
昔、鹿の子絞りに憧れたけれど、貧しくて買えなかったので、染め模様で我慢したとかしないとか。絞っていない『鹿の子』模様が、『疋田』なのです。

だから、格でいうなら、『鹿の子』が上。『疋田(ひった)』は下。になるのです。

さて。
お弟子さんのころ。
あのころは、まだまだ、バブリーな頃で、総絞りの羽織とか、振袖とかあったんです。
総絞りの難しいところは、絞りをつぶしてはいけないところ。
それと、つりあい。
ま、釣り合いのほうはおいて置いて。

安い生地で鹿の子を絞った場合、つぶれやすいんですよね。
しかも、そんなのに限って、裏打ちされてなかったりして。

普通に、湿布をかけて、普通にこてを当ててたら、言われました。

   「あんた! それ、『鹿の子』やで!! 『疋田』にしたら、あかんやん!!!」



それも、遠い昔の話です。





と。思っていたし、信じていたのですが。
検索してみたら、「疋田」も絞りの染めなんだかとか?

え、そうなんですか?

いつから?
前から?

そうなんだぁ・・・・・・。
弟子の頃


熱湯をこぼした。

光熱・水道料金のお知らせは、感熱紙だ。
その上に沸きたての熱湯をこぼしたから、真っ黒。
でも、良くみると、数字のところは光の加減で浮いて見える。

   ほー。
   最近は、感熱紙も進化したもんだな~。

で。




ワタクシがお弟子さんだった頃は、Faxがようやく家庭に普及し始めた頃で、感熱紙が出始めた頃。

感熱紙とは、熱を感知して、文字なりが浮き出てくる仕組みの画期的な紙。
インクリボンが要らないので、ほー。便利だなー。となる。

ところが、この仕組みを知らないと、恐ろしいことになる。


ぴー・・・がががー。
となって、ファックスが紙を吐き出し始めたときに、何かに引っかかってシワシワ。
それ以上どうしようもないので、手で伸ばして先生のところにおいておいたのですよ。
そしたらさー。

「あ!」

と静かな仕事場にお師匠さんの叫びが響いて、一斉に視線が集まって。そこで見たものは、

   真っ黒になったファックス用紙@呉服屋さんからの寸法書

曰く、
「シワシワだったから伸ばそうと思ってアイロンをかけてみた」

恐縮しながら、呉服屋さんに寸法書を再送してもらっていましたが、
最初、ファックス機のせいにしていたのを、ワタクシは聞いていましたよ。
ニヤニヤ。
弟子の頃

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